「コールド・スプリング・ハーバー/ビリー・ジョエル」 72年 評価4


 70、80年代を代表するスーパースター、ビリーの記念すべきデビューアルバム。
 レイ・チャールズを崇拝しているためか、レイを意識したボーカルは不安定で、本来の声質の持ち味を殺しているし、同じような曲調の曲が多く、アルバムとしては単調ではあるが、メロディの美しさは特筆されるべきもので、もしすべて同じ曲だとしても、プロデュースをし直し「ストレンジャー」のあとに発表されていれば、疑いなくヒットしたであろう。

 特に「シーズ・ゴット・ア・ウェイ」「ゴット・トゥ・ビギン・アゲイン」等の曲の美しさ、瑞々しさはただならぬ才能を感じさせる。

 さて、ピアノマンと並び称されるエルトンとビリーだが、元々の音楽性の違いはそれぞれの1、2作目を聴くと明らかで、ストーンズへの憧れが強い(どのアルバムにも1曲はストーンズに捧げる曲を入れる)エルトンは早々にピアノとロックの融合を図り、自身のバンドを作ってピアノをバンドの中のひとつの楽器と位置づけたのに対し、ビートルズの影響が大きい(特にポール)ビリーは吟遊詩人という色合いが濃く、あくまでもピアノが中心のサウンドだ。しかし、そのそれぞれの方向性が間違っていなかったことは二人のその後の活躍で明らかになる。